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設計者コラム

#016 光学の『仮想点』について(2)

#014の続きです。
前回は単レンズの焦点距離を題材に、凹レンズの焦点位置を『仮想点』として説明しました。
この話では暗黙の前提があり、レンズの厚みをゼロとして考えていました。
もちろん厚みがゼロのレンズなど存在することが出来ません。
実際のレンズにはちゃんとした厚みがありますので、その場合は焦点距離は何処から測ればいいのかという疑問にぶち当たります。
なんとなく『レンズ厚の中心?』などと思われるかもしれませんが、そう簡単ではありません。

後側焦点距離

上の図はレンズ中心を貫く軸(以下、光軸と呼びます)に対して平行な光線をレンズ左側から通している概念図です。
模式的ですが、レンズ左面で一回屈折してから右面でもう一回屈折している様子がお分かりかと思います。単レンズの場合はこのように絶対に屈折面が二面ありますので光線はこのように振舞います。

図では左から入射した光線が左面で屈折を受けずにそのまま通過したとする線を入射光の延長として点線で表しています。同様に右面で屈折を受けて最終的にレンズから出ていく光を逆に延長した線を同じように点線で(左側に)延長しています。そして両方の点線が交差するポイントから光軸へ垂線を下ろしているのが緑色の実線です。光軸とこの緑色の線の交点にはH'と表した点が存在します。
この緑色の線を面として考えた場合この面を主平面、特にこの場合は後側主平面と呼びます。同様に交点H'を後側主点と一般には呼んでいます。
前置きが長くなりましたが、焦点距離はこの主点を基準に計測します。つまりH'から集光点までの距離がレンズの厚みを考慮した時の焦点距離です。

逆のケースも考えましょう。
今度はレンズの右側から光軸に平行な光線を左向きに入射したケースを考えます。

前側焦点距離

上の図がその概念図です。
これまた同様に屈折前と屈折後の光線を延長した交点から光軸に垂線を下ろし、その光軸との交点をHと表しています。
この緑色の線を平面とした時、これを前側主平面、Hを前側主点と呼びます。
全く同じようにHから左向きに集光点までの距離を計測した値を前側焦点距離と呼びます。
レンズの前と後ろの屈折率が同じ場合は前側焦点距離と後側焦点距離は同一の値となります。レンズは普通、空気中に置かれることが多いのでレンズ前後の屈折率は同一ですから、前後の焦点距離は同じということですね。

いかがでしょうか。今回は仮想点として主点を紹介しました。この仮想点も実際に目で見えるわけでもなくなかなか分かりにくい概念ですね。でも焦点距離を正確に測る基準点ですのでとても大切な仮想点です。