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設計者コラム

#014 光学の『仮想点』について

光学やレンズ設計の世界ではなにやら怪しげな仮想的な点や面を考えることがしばしばあり、初めて学人はこれに悩まされることが良くあります。
ちょっと考えただけでも、負レンズの焦点位置、主点、主平面、入射瞳、射出瞳などなどです。
これらは大抵、目に見えず概念的な存在ですから存在そのものは勿論、何のためにソレが定義されているのかも不可解で理解しにくいものです。

まずは焦点ですが、凸レンズの焦点距離や焦点位置は下図のようにとても理解しやすい物理量や現象ですね。
ちょうど太陽光を虫眼鏡で紙に集光しているのと全く同じです。


凸レンズ

左側から赤い線で示した平行光線がレンズに入射し、屈折後に一点に集光している模式図です。
簡単のためにレンズの厚みはゼロと仮定しますと、レンズの位置から集光位置までの距離を焦点距離と呼んでいます。
図に示した場合、光線は左側から右側に流れるのが通例で、この流れに沿って焦点距離も測りますからこの場合の焦点距離はプラスの値です。

一方で凹レンズの場合は厄介です。
下図のように赤い線で示した平行光線を凹レンズに入射させると、透過後には集光せずに発散します。
実線で描いているのが実際の光線です。

凹レンズ

この場合は凸レンズのようにレンズ右側に集光点がありません。発散しているので当然ですが、、、。
凹レンズの場合は仕方がないので、発散後の光線をレンズ左側に直線で延長した時に現れる『仮想点』を集光位置として定義します。
図では点線で描かれている部分です。
当然、その点に本当に集光している訳では無いので紙などを置いても何も見えません。というかそんな場所に紙を置いたらレンズへの入射光線そのものが遮られるので、そもそも何も現れようがないのですが。
この場合の焦点距離は凸レンズと同様に、レンズ位置から『仮想点』までの距離なのですが基準点であるレンズから左方向に測るのでこの場合の焦点距離はマイナスの値になります。

このように光学には最初当惑する概念が結構出てきます。

もっとも本当の光も煙を焚いたりスクリーンを置いたりしなければ進んでいる様子を目で見ることも通常できないので、似たようなものではありますが、、、。