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設計者コラム

#097 OpTaliXでグローバル最適化

これを書いている時点でリリースされているOpTaliX(V12.00)には、一色真幸氏によるエスケープ関数を使った新しい最適化アルゴリズムが初搭載されています。
リリース元のOptensoによれば、”global optimization algorithm”と銘打っています。
エスケープ関数は簡単に説明すると、今居るローカル解の谷間を埋めることで外側の解空間に脱出させる働きをするものです。
脱出した先が良い解をもたらす解空間とは限りませんが、より良い解が広がっていたら良いレンズになるわけです。
こういったアルゴリズムの搭載は嬉しいですね。

 

早速試してみました。
このリリースには検証のためのファイル、"global_opt_45-64_Projection-lens.otx"が同梱されていてグローバル最適化を試すことが出来ます。
単にOpTaliXで試すだけでは面白くないので、Zemaxのグローバル最適化と比較してみました。
Zemaxのグローバル最適化は”グローバル最適化”と”ハンマー最適化”の二種類を選択できますが、アルゴリズムの詳細は不明ながら、確率的なバラツキを使っているように見受けられます。
“ハンマー最適化”は比較的短時間で割に良い解を出してきます。
“グローバル最適化”はより大域的な解を出す印象がありますが、ハンマー最適化より時間が必要です。

 

先ほどのファイルをZemaxにインポートして同じスタートラインで最適化を実施し、結果の比較をしてみるわけです。
こういうの、ワクワクしますね。

 

下の表はZemaxとOpTaliXの最適化を行う際の前提条件です。

table1

それぞれ異なるソフトなので全く同じ条件に揃えるということは困難ですが、出来るだけ同じ条件にしました。
OpTaliXのグローバル最適化は、従来から搭載されているDLS最適化アルゴリズムのKT法あるいはLM法(どちらもローカル最適化)に先ほどのエスケープ関数を併用してグローバル最適化させる方法のようです。
今回はKT法にエスケープ関数を併用してみます。Zemaxは"グローバル最適化"を使用します。
核となる光学性能向上のための最適化オペランドは、どちらもスポット径の最小化のみとします。
焦点距離やFナンバーはどちらもソルブで固定する方法を取っていますので、何もしなくても固定値になります。
それぞれ5個のグローバル解が出て来るまでの時間も計測しましたが、表にあるように圧倒的にOpTaliXの方が早く、Zemaxの1/24の時間で終了しています。
普段のローカル最適化でも感じていましたが、Zemaxはジワジワと最適化が進むのに対してOpTaliXはスパーンと終わる感じがするんですよね。

 

肝心な光学性能について軽く説明します。
まずはレンズ図ですが、Zemaxではあまりレンズ形状に変化が見られません。
それに対してOpTaliXは明らかな変化が認められました。

fig01

また、デフォーカスMTF特性を見ると、特に赤い線で示される最外角のMTF性能がOpTaliXの方が良好なのが分かります。

fig02

うーん、OpTaliX…早いですね。


これでOpTaliXの方が最適化性能が良い、とは一概に言えません。
色々なケースで比較検討が必要と思いますが一つの参考としてください。