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設計者コラム

#005 レンズ設計:ペッツバール和改善事例(2)

毎日暑い日が続いています。
皆さまお元気でしょうか。

前回の予告どおりに、今回もペッツバール和の補正方法について説明したいと思います。
前回は凸レンズ、凹レンズに使うガラスの屈折率によって補正する方法を説明しました。
今回は『フィールドフラットナー』と呼ばれるレンズを導入することでペッツバール和を改善する方法です。

フィールドフラットナーとはその名前のとおり、像面を平坦にするレンズのことです。
形状的には下図のような前後の面の曲率半径がほぼ等しく、肉厚の厚いレンズです。
大抵はこれを像面近くに配置します。

FieldFlattener1

 

肉厚はともかく、前後の面の曲率半径がほぼ等しいので単レンズとしては屈折力を持ちません。
つまりコレをレンズ系に新たに入れても焦点距離が変化しません。
極端な話ですが前後面の曲率半径を無限大にすれば、厚い平行平板を光学系に入れているのと同じです。

上の図の例では画面中心に向かう光がフィールドフラットナーの第1面である凹レンズの性質を持つ面によって跳ね上げられ、第2面である凸レンズの性質を持つ面によって収束される様子が分かります。
またフィールドフラットナーの厚みが厚いために、第2面では1面よりも高い位置で屈折を受けることになります…といいますか、それを狙って厚くしています。
式を展開すると退屈ですので簡単に述べますと、ペッツバール和の補正には画面中心に向かう光を

 ・凸レンズではなるべく高い位置で
 ・凹レンズではなるべく低い位置で

屈折させることが効果的です。これを複数のレンズで担当させてもよいのですが、一つのレンズでこれを実現しているのがフィールドフラットナーなのです。

FieldFlattener2

また都合の良いことに、画面中心に向かう光を像面近くの光線の高さの低い位置で使用するため、球面収差に与える影響が軽微で選択的に像面湾曲を補正することが可能です。

如何でしょうか。
ペッツバール和および像面湾曲を効果的に補正する方法を2回に分けてお話ししました。
少々退屈だったかもしれません。ご容赦ください。

次回以降はもう少し面白い話を探してみたいと思います。