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設計者コラム

#040 マクロレンズ

カメラ用の交換レンズにはマクロレンズと呼ばれるレンズのカテゴリが存在します。
通常の交換レンズは最短撮影距離(撮影物体からカメラ内の撮像素子までの距離)があまり短く取れません。
この撮影距離を短くしていくと、一般的には倍率(=像の大きさ÷物体の大きさ)が大きくなるので、物体をアップにして細かい部分を撮影するなどの際には好都合です。
しかし、一般の交換レンズは撮影距離を短くしていくと像面湾曲が著しく発生するために画面全体の画質を保つことが出来なくなります。
つまり、画面中心にピントを合わせれば画面周辺にボケが発生し、逆に画面周辺にピントを合わせれば中心がボケてしまいます。
このため普通は物体距離があまり短く取れないように制限されています。
このようなレンズで単に倍率を稼ぐ(=物体距離を短く取る)ためにはエクステンションチューブのように、レンズとカメラボディの間に挟む単なるチューブを使用します。
しかし、上記の像面湾曲は補正されていないので画面全体にピントが合わない現象はそのまま残ります。

一方でマクロレンズは撮影距離を短くした際に発生する像面湾曲を補正するためのレンズ群が内部に存在し、この問題を解決しています。
大抵、倍率が0.5~1.0倍程度確保出来ますので、かなり物体に近づいて細部を撮影することが可能です。
手持ちのフルサイズ用の焦点距離50mm、F1.4の(マクロレンズではない)レンズは最短撮影距離が450mmとあります。ざっとですがこの時の倍率を計算すると0.15倍の縮小倍率です。
ですから倍率が1.0倍という数値はかなり大きいことが分かります。
勿論、一般のレンズが撮影出来る物体距離(無限遠~数十センチ)の範囲も完璧な性能を出しますので、単焦点レンズとしてはオールマイティーです。