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設計者コラム

#032 ベンディングによる焦点距離の制御

ZEMAXでレンズ設計を行う場合に焦点距離をある一定値に制御する、という場面はよくあります。
逆に焦点距離を制御しないというケースはあまり見られません。
それくらい焦点距離は光学系の最も重要な指標の一つです。

通常、ZEMAXでは"EFFL"というメリットファンクションのオペランドを使用して焦点距離を制御します。
しかしながらメリットファンクション中の他のオペランドのウエイトとの兼ね合いで、若干のズレが生ずることが普通です。
このため焦点距離を目標値ジャストに合わせこむ必要がある場合には結構難儀します。

こういった場合には、センサ面直前のレンズ面の曲率半径をベンディングによって決めてしまう設定が重宝します。
普通は最適化の変数として設定してしまう面の曲率半径を、一定の焦点距離になるように強制的に決定してしまう方法です。
これは最適化の最中にも有効で、一旦設定してしまえば焦点距離は決してズレません。

ベンディング角

この図は3枚構成のレンズのレンズの場合ですが、特にレンズ枚数に関係なくセンサ面直前の曲率半径を持つ屈折面で曲率半径を決定するために『マージナル光線角』ソルブで、図のθの値を入力します。
hは入射瞳の半径、fは目標とする焦点距離です。
通常、結像光学系の最終面はセンサに向かって収束しますので、θは負の値になることにご注意ください。収束光の角度が負になるのはZEMAXの角度の計測方法に関する規約です。

一旦このような処理を行うと、この面以外の屈折面の曲率半径を変更しても(ちゃんと光線が通る光学系である限り)この面の曲率半径が自動計算されるため決して焦点距離がズレなくなります。
但し、軸上マージナル光線が蹴られて決してビネッティングが生じないようにしてください。ビネッティングが生ずると焦点距離が変わってしまいます。

このようにシビアな焦点距離制御に有効なベンディングによる焦点距離の制御ですが、NAが非常に大きな光学系で最適化を行うとZEMAXを道連れに異常終了することがあります。
恐らくZEMAXのバグだと考えています。
そのような光学系の場合にはご注意を!