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設計者コラム

#003 レンズ設計:ペッツバール和

撮像レンズの収差の一つに『像面湾曲』と呼ばれるものがあります。
撮像面(フィルムとか、撮像素子です)と平行な壁を撮影した時や、遠景を撮影した時、ちゃんと隅々までピントが合いますよね?(正確には遠景は壁のように平坦な物体構造をしているわけではありませんが、『無限遠』と一括りにすれば見かけ上、平坦です。)

これは平面が平面に結像しているからなんですが、実は当たり前ではありません。

レンズ設計で、わざわざ平面が平面に結像するようにしているので、そのように振る舞うわけです。そこら辺のことを何も考えないで設計をしてしまうと、下図のように平坦な物体が湾曲してしまいます。(下図は像や物体の断面図ですので、実際には湾曲した像は球面状になります。分かりやすいように強調して描いています。)

像面湾曲

では設計上、どのように配慮すればいいのかという点が今回のテーマの『ペッツバール和』です。

ペッツバール和は撮像レンズを構成している各レンズの焦点距離fと屈折率nが分かれば簡単に下式で計算できます。

 

ペッツバール和

 

そして、このPの値をゼロにすれば像面は平坦になります。

何か拍子抜けするくらい簡単ですね。手計算でもできそうです。

屈折率はマイナスの値を取りませんからペッツバール和をゼロにするためには絶対に焦点距離がマイナスのレンズ、つまり凹レンズが必要なことが分かります。

普通、撮像レンズはどうしてもペッツバール和がプラスに傾きがちなので焦点距離がプラスのレンズ(凸レンズ)には屈折率がなるべく大きなガラスを使用し、凹レンズには屈折率がなるべく小さなガラスを使用することがペッツバール和をゼロにするためには効果的なことも上の式から分かります。

 レンズ設計の最初の段階で、ペッツバール和をある程度制御したモデルから着手しないと後々面倒なことになります。そういう意味ではレンズ設計にとってかなり重要な要素の一つであると言えます。