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設計者コラム

#012 スマホ搭載レンズの設計に思うこと

現在、世の中に流通しているスマホやタブレット端末には必ずと言っていいほどカメラレンズが搭載されています。
スマホのレンズはたいてい5枚以上のレンズが使われていて、図のようになっています。
(この図のレンズは私が設計したものではなく、特許データからレンズ断面図を再現したものです)
一番右側の平板はフィルタです。

lens figure一般的にイメージされるレンズの形状とは結構異なりますね。特に一番右側のレンズはうねりが非常に大きく、波打っていることが良くわかります。
これは極端な非球面形状を使用していることが原因です。

全部で6枚のレンズを使用した構成ですが、全てのレンズの両面が非球面で、プラスチックを使用しています。
これで、

全長        5.1mm
Fナンバー 1.75
半画角     36度
焦点距離   4.1mm

というスペックです。
スマホは薄さが命のような面もありますから、全長5.1mmというのはこれでも少々長い方で4mmを切るレンズも普通です。

色々な見方・解釈がありますが左側から3〜4枚目くらいがマスターレンズで、残り2枚が収差補正用といった感じでしょうか。
レンズは一枚で色々な収差を同時に補正していますので収差補正の切り分けが大変難しいのですが、右から2枚のレンズで倍率色収差、像面湾曲とディストーション補正を行っているように見えます。

また一番カメラを物体に近づけた時の倍率はおよそ0.045倍で、使っている撮像素子の推定画素サイズは1μm正方程度です。
倍率はある大きさの物体が像面上でどの程度になるかという係数ですから、これを使って撮像素子1画素が物体上ではどれくらいの大きさになるかを逆算しますと、22μmになります。
実際には1画素では画像になりませんから、2画素必要と考えても44μmです。猛烈に小さいですね。かなりの高性能ぶりです。

同じスペックのレンズを球面レンズだけで構成しようとしたら、こんな薄さやFナンバーの達成は到底無理です。
非球面の威力、ですね。