設計者コラム
#111 凹レンズの役割
撮像レンズにはまず間違いなく凹レンズが使われています。
撮像レンズの役割は全体で凸レンズなので、光学設計をされない方には凹レンズが使われる理由が分かりにくいようです。
『凸レンズだけで構成すればいいんじゃない…』といった感じです。
収差のことをご存知の方に有名なのは、凹レンズを色収差補正に使うというポイントですね。
凹レンズを使用して色ずれを発生させる色収差を補正する、というのは確かに真理です。
また画面中心周辺の画像のスッキリ加減を損なう球面収差、これは特に球面レンズを複数使用してもボケが溜まる一方で改善は不可能です。
これも凹レンズで補正できます。
更に平面物体が平面に写らない像面湾曲という収差があります。
撮影物体を平面と仮定するシーンが多いのですが、これを像面湾曲が残っているレンズで結像するとピントが合う領域が平面にならずに湾曲する現象が起こります。
通常、この現象が気にならないのはレンズ設計者が一生懸命に像面を平坦にする努力を行っているからです。
この像面湾曲も凹レンズが存在しないと補正できません。
このような理由からどうしても凹レンズが必要になってしまうんですね。
レンズ設計が面白いところです。