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設計者コラム

#044 最適化比較(z2o)

Zemax to OpTaliX(z2o)第三弾です。

実際の設計に使用していますが、OpTaliX-Proは他のソフトと比較して遜色ないレベルだと感じています。
レンズ設計に求められる機能は全て網羅されていますね。動作も非常に軽快です。
Zemaxには無かったカム計算機能や誘電体多層膜の設計機能も搭載されていて、使うのが楽しいソフトです。
最近は日本でよく使われる3次収差係数を出力する拙作のZemaxマクロを、OpTaliXマクロに移植しました。
マクロ言語仕様はお互いそれほど変わりませんので、移植は楽です。

さて今回は最適化の比較を行ってみました。
ZemaxとOpTaliXで全く同じレンズデータからスタートし、10サイクルの最適化に掛かる時間と、最適化結果について比較を行います。
なるべく双方、同じ条件となるようにしました。
対象としたのは下に示す典型的なダブルガウスタイプのレンズです。


gauss

 

以下、設定条件です。

⓪使用ソフトはZemax OpticStudio 19.8(October 28, 2019)、OpTaliX 9.95で、両方とも最新バージョンです。
①入射画角0~20度を2度ずつ11像高設定します。
②曲率半径のみ最適化対象としました。ただしレンズ最終面から像面までの距離はピント合わせに使います。最適化変数の数は10個です。
③ピント合わせ条件はMTFの軸上40本/mmのピーク位置とします。
④設定波長および波長ウエイトはZemaxとOpTaliXで同一設定です。
⑤ビネッテイングファクタは最適化毎に更新します。
⑥メリットファンクションは、
  焦点距離50mm目標(Zemaxはeffl、OpTaliXはefl)。
  MTFは40本/mmが各像高、各方位で目標値1.0とします(Zemax、OpTaliX共にmtft, mtfs)。ただし軸上はmtftのみです。
⑦軸上のみスポット径最適化を併用します(Zemaxはrsce、OpTaliXはspd)。ただしウエイトはゼロです。
⑧最適化アルゴリズムは減衰最小二乗法(DLS)、OpTaliXはLevenberg-Marquardt法です。
⑨使用PCは同じ環境です。

カッコ内はオペランドの名称です。
MTF最適化にもかかわらず⑦でスポット径最適化(ウエイトゼロ)を併用しているのは、そうしないと最適化オペランドが不足してOpTaliXでは最適化が不能になるためです。
最適化オペランドの数を稼げれば別にスポット径最適化でなくても良いのですが、簡単なので今回はそのように設定しました。
またOpTaliXのマニュアルによればLevenberg-Marquardt法は一般的にDLS法と呼ばれている、とありますので細部の相違はあると思いますが両者ともDLS法です。
以上の条件で、両方のソフトで10サイクルの最適化を10回実施し、10回ワンセットの平均値を取りました。
その結果、

  Zemax 13.4秒/10サイクル
  OpTaliX 9.3秒/10サイクル

以上の結果を得ています。
そもそもZemaxの1サイクルがOpTaliXの1サイクルに相当するのか不明なのですが、これについては検証も出来ないのでサイクル数だけは合わせています。
OpTaliX、早いですね。Zemaxの約70%です。

まず最初に最適化前のMTFを計算・比較したものが下図です。

before_opt_MTF

 オレンジ色がOpTaliX、青色がZemaxで、破線がメリジオナル、実線がサジタルです。
多少のズレはありますが、ほぼ同じ結果になっています。
面白いのはこのズレがOpTaliXではメリジオナルはZemaxより若干大きめに出ますが、サジタルはその逆になっていることです。
このレンズだけなのか、一般的にそうなるのかは現状不明です。

次に10サイクル最適化後のMTF性能です。

after_opt_MTF

まず軸上(画角0度)では両者共ピッタリ一致していますね。
メリジオナルMTFは画角2度~14度の領域ではZemaxが優勢、それ以降の画角のMTFはほぼ同一です。
サジタルMTFは画角2度~9度の領域ではOpTaliXが優勢、それ以降はほぼZemaxが優勢です。
今回の比較結果ではメリジオナルよりサジタルの方が違いが大きく出ました。
(その後、OpTaliXのKuhn-Tucker法アルゴリズムでサイクルを回すと、Zemaxとほぼ同一の結果が得られました。)

このケースでは上記の結果を得ましたが、どのようなレンズ設計事例でもこのようになる訳ではないと思います。
Zemaxの方が上手く進むケースもあるでしょうし、OpTaliXの方が良い場合もあるでしょう。
参考に留めてください。

私の日頃の業務ではZemax to OpTaliX移行は問題なく可能と判断しました。