設計者コラム
#041 マクロレンズ2
前回に引き続き、マクロレンズを取り上げます。
今回は実際の特許例に掲載されているデータを基に、レンズ図や各群の動きを見てみます。
いくつかある特許例から、交換レンズメーカーのタムロンの90mm F2.8のマクロレンズを選択しました。
公開特許2013-130724に記載の実施例2です。
上図のようにレンズは13枚構成で、3個の群に分かれていることが分かります。
ピントを無限遠、光学倍率0.5倍および至近の光学倍率1倍に合わせた箇所でレンズの外観を描いています。
図では分かりにくいかもしれませんが、ピント合わせをすると第1群が最も早く動き、それを追うように若干遅いスピードで第2群が動きます。
第3群は動かず固定ですね。
単なる単焦点レンズと比較すると、
・群が3個に分かれていて、その動きが独立になっている
・レンズ枚数が多い
以上のポイントが大きな違いです。
これはコスト高やレンズの大型化につながってしまう要因ですが、一般の短焦点レンズでは実現不可能な、
・高倍率(この例では1倍)
・どのピント位置でも高性能な光学性能をキープして劣化が無い
以上のポイントが特長です。
ピント位置変化による光学性能の劣化を主に抑えているのが、第3群のレンズ群だと考えています。
前回も書いたようにピント変化による光学性能の劣化は像面湾曲が主な原因となりますが、第3群はこれを補正しているようです。
ガラスの使い方やレンズ構成など、お見事ですね。