設計者コラム
#30 ΔθgF
カメラなどの撮像レンズのレンズ設計をする場合、使用する硝材の特性値としてよく使用されるのはd線屈折率(Nd)とアッベ数(νd)の二つですね。
大雑把にはこの二つの値で設計出来ますが、倍率色収差など特に色収差関係の微妙な調整にはこの他にpgFまたはθgFと呼ばれる部分分散特性を表す数値も必要になります。
この数値はg線屈折率Ng、F線屈折率NF、C線屈折率NCとした場合、
θgF = (Ng - NF) / (NF - NC)
で与えられる数値です。
この数値とアッベ数νdをプロットしたグラフは弓なりの分布を持ち、反り返る部分を除けば大雑把に直線に乗ってきます。
硝材メーカーのOHARAさんではNSL7とPBM2を直線で結び、この直線を上記のグラフに重ね書きしています。
この直線から離れているほど異常分散性が高い硝材ということになります。
異常分散性の高いガラスで有名なのは望遠レンズなどで多用されるS-FPL系のガラスですね。先ほどのグラフでは左下の方に分布しています。
さて各硝材から先ほどの直線へ向けて垂線を下ろし※Y軸方向に沿って垂直線を引き、この垂線※直線の長さを測ったものが題目のΔθgFと呼ばれる数値です。
この値の絶対値が大きいほど、異常分散性の大きいガラスと言えます。
ZEMAXのガラスカタログには各硝材の分散式の係数や屈折率、アッベ数と同時に、この値がdpgFとして掲載されています。
OHARAさんなどの場合この数値がちゃんと載っているのですが、例えばzeon.agfファイルのZEONEX関係のガラスカタログはなぜかこの値がゼロになっています。
勿論、ゼロではありません。ここの欄の数値は自動計算で求まって表示される数値ではなく自由記述欄のような扱いと思われます。
各任意波長の屈折率は分散式から自動的に計算されますので普段はこの欄の値はあまり意味を持ちませんが、ΔθgFを確認したい場合や、レンズデータエディタで硝材名を入力し、その後モデルガラスに変更した時などは現実とは違った値になってしまいますので要注意です。
※ΔθgFの測定方法に関する記述が間違ってたので訂正しました。(2020/03/20)