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設計者コラム

#013 スマホレンズのペッツバール和

スマートホン搭載のレンズについてペッツバール和との関連性を少々調べてみました。
ペッツバール和というのは本コラムの#003で紹介していますが、簡単に言うと像面を平坦にする条件です。
この像面の平坦性を調べる一つの指標として『ペッツバール和』という数値があり、レンズの評価やレンズ設計の分野で使われています。
確かに球面を主体とした撮像レンズではかなり便利な指標で、この数値を見るだけである程度の像面の平坦性が分かってしまいます。
特に広角系レンズの設計では、なるべくペッツバール和がゼロに近いデータから設計を開始しないと設計が破綻するほど大切な値です。

ところがスマホレンズの場合は極端な非球面を多様することで像面の平坦性を保っていることもあり、私の日常では『関係なくは無いけど、そんなに重要ではない』感じがしていました。
これが正しいのかどうか検証するためにサンプル数は少ないのですが、各社スマホレンズの公開特許データを使って調べてみました。
公開特許データは光学性能がちゃんと出ていない事例も含まれているのですが、そこらへんは無視です。(笑)
半画角は18〜44度程度の各サンプルのペッツバール和を調べて散布図を描いてみました。この散布図のペッツバール和は各レンズの焦点距離を1mmにスケーリングした後の値です。このようにしないと同じ土俵で比較検討が出来ませんので、、、。


散布図

画角35度の付近のサンプルが密集しているのは単にこのスペックの公開特許データが多いからです。
球面レンズ系では広角になるほどペッツバール和を小さくしないといけないのですが、調べた範囲では逆になっていますね。
また青丸や赤丸で囲った部分は、ほぼ画角が同じなのにペッツバール和の分布に幅がある箇所です。
ペッツバール値の幅で0.1以上の開きがあります。これはかなり大きな幅です。
ペッツバール値が増える本来ならマズい条件を使ってでも、球面収差や色収差などを補正して、発生してしまう像面湾曲を強い非球面で補正してしまうスマホレンズ設計の一端を見た感じがします。